MiSightが承認されました。

以前、デフォーカス組み込み型の近視抑制コンタクトレンズ としてクーパービジョンMiSightを紹介しました。
未承認レンズであり、当院では同一効果のSeed Oneday PureEDoF を使用してきました。

最近、子どもの近視治療用コンタクト、国内初の薬事承認を18日審議 という記事をみたので資料請求したところ、以下2論文をいただきました。

抄読

1.A 3-year Randomized Clinical Trial of MiSight Lenses for Myopia Control – PubMed

2.Long-term Effect of Dual-focus Contact Lenses on Myopia Progression in Children- A 6-year Multicenter Clinical Trial – PubMed

1.は前回よんだ論文です。3年間MiSightを装用した効果を示しています。

治験参加者は8歳から12歳の近視児童。
治験デザインはMiSightレンズ装用者53名、プロクリアー1Day(コントロール)装用者56名。二重盲検。
結果「3年後の結果で、屈折度は 59% (−0.51 ± 0.64 D vs −1.24 ± 0.61 D) =0.73D、眼軸長は52% (0.30 ± 0.27 mm vs 0.62 ± 0.30 mm) =0.32mm抑制された。

2.は1.のフォローアップ論文。つまり、4年目から6年目までを経過観察し判定したものです。

3年間MiSightを装用し、引き続き3年間(合計6年間)も装用したグループでは、近視進行の抑制は保たれた。

3年間MiSightを装用せず、4年目から装用に転じたグループでは、未装用だった3年間と比べて71%眼軸長の伸長が抑制された。

結論
  • 装用が早いほうが望ましいが、装用開始が遅れたとしても効果は十分見込める。

担当者談「承認は取ったが、発売については1年くらいはかかるかもしれない」

PureSeeとEyhanceの比較

J&JがEyhance欠品中につき、PureSeeを提供してくれている。
で、両者の比較を行った。

以前、「デフォーカス曲線みると単焦点レンズやアイハンスの遠方~中間距離をやや膨らかしただけような気もする。」とかいた。

上記をみると、EyhanceをOddysey寄りに振ったという表現のほうがいいかも?

エネルギーロスは両者ともほぼ0%で、コントラスト感度曲線に差はない。

NIDEKのNSP-3について

アイハンスがま~たまた欠品なので、同様コンセプトを持つ他社製品を調べました。

いわゆる単焦点プラスとしては、このNIDEK NSP-3と、以前述べたHOYA ヴィヴィネックスインプレスEMがある。

NSP-3のデフォーカス曲線は

 

アイハンスとヴィヴィネックスインプレスを、以下に示す。

左:アイハンス 右:インプレス

 

NIDEKは加入度数≒0.75Dよりも、farのデフォーカス曲線が平坦になり測定ずれに強いことを強調したい感じだ。

↑は、僕が以前から言ってる論点で、眼軸長測定装置や計算式の改良と同じくらい重要だと思う。

HOYA インプレスは加入度数1.0Dをわりかしアピールしており、社によって戦略が異なるんだろうな。

 


 

☞加入度数を表立って言わないのは、単焦点レンズとして許認可とってるためらしい。

 

当院のミニモノビジョン

最近施行したミニモノビジョンの症例で、データがそろっている場合について、患者さん満足に何が重要かを調べました。

生データは

Patients evaluation Age 5mVision 70cmVision 30CmVision DominantEye TargetError ResisualError ToricLensInserted? Far Eye Posirion Near Eye Position Tear Film Thickness Non-Dominat eye Axis Length
Can read newspaper without glasses 85 1.2 0.5 0.4 Left -0.5 -0.625 no 0 8 18.5 24.93
Can see desktop without glasses.But can’t read a book. 66 1.5 0.7 0.7 Left -1.25 -1.625 yes 0 10 11 28.9
Can’t see well. 61 2 0.5 0.5 Right -0.5 -0.375 no 0 12 9.5 25.99
almos everything OK without glasses. 65 1.5 1 1 Left -1 -1.25 yes 14 20 19 26.86
can read a book. also can watch TV without glasses. 82 1 0.5 0.4 Right -1 -0.5 yes 0 6 19 24.38
can read a book without glasses. 67 1.5 0.6 0.6 Right -0.5 -0.375 no 2 10 15 25.38
seems to be able to rea a book without glasses. 72 1 0.3 0.3 Left -1 -1.375 yes 0 10 19.5 24.35

Julius ai によるご託宣、以下の如し。

MICROMONOVISION ANALYSIS SUMMARY
Key Findings:
– Distance vision (5m) is strongest predictor of satisfaction (r=-0.828)
– Tear film thickness positively correlates with satisfaction (r=0.696)
– Critical thresholds: Distance vision <1.5, Tear film >15m
– Unsatisfed patient is younger (61 vs 74.5 mean)
 

ま、この程度の症例数ではなんともいえんが、朧ろにみえるのは

  1. 遠見視力は出るほうがいいが、かといって2.0も出してはいかん。→ FarをFirst negativeにするだけではなくって、monovisionのdef値もnegative気味にするべき?
  2. ドライアイは治療しておく。→多焦点レンズと同じである。
  3. Unsatisfed patient is youngerは、アイハンス採用するなら若い方が良い、と相違するな。

近視眼に対する白内障手術と眼内レンズ度数計算を科学する

大阪大学 後藤聡先生の話でした。 2025/6/28 第7回日本近視学会総会@コングレスクエアグラングリーン大阪

近視眼に対する白内障手術の注意点
  • 創口形成:early perforateしやすいので3面切開をする。
  • CCC:前房が深いためCCCが大きくなりやすい
  • 逆瞳孔ブロック:前房が急に深くなり瞳孔領が散大する。

感想:切開方法よりも角膜への刺入部位がpointではないかな。近視眼はearly perforate気味になりやすいが、前房は深いので虹彩脱出しにくい。遠視眼+αブロッカー内服の方が要注。CCCは、接子が立ち気味でやりにくい。逆瞳孔ブロックはよくあるが、急に深くなるのは心臓に悪い。ブロック解除より、まずボトル下げるべし。

IOL度数計算式
  • 超音波測定時に開発された旧世代式の代表がSRK-T vs 光学測定対応の新世代式の代表がBarrettⅡ
  • いまだにSRK-T式の採用が多いが、BarrettⅡも増えてきている。☞ 当院は、数年前からBarettⅡ
  • KANE式が新顔で注目されてる。
  • ESCRSのWebなら新世代IOL計算式が一度に算出可能である。
眼軸長測定装置
  • 眼軸長測定はSS-OCT方式に移行しつつあり、OA-2000(Tomey)、IOLMaster700(Zeiss)、Arterion(Heldeberg)、Eyestar900(Haag-Streit)、Argos(Movu)が代表機種。光学式で測定困難であった熟成白内障でも測定可能である。
  • 上記のうち、Argoのみ眼軸長=Σセグメント眼軸長(=部位別光路長/部位別屈折率)で測定する。眼軸長が短めに出るため、古い世代の計算式では近視化する。新しい計算式はそうでもないが、超長軸眼の場合かえって精度が低下する。
  • Barrett先生はこの点に気付いたため、BarretTrueAL式を発表している。

Refractive accuracy of the new Barrett formula using segmented axial length compared with that of the traditional Barrett Universal II formula – PubMed より引用すると

左:Argos+BarrettⅡ 真ん中:Argos+BarrettTrueAL 右:IOLマスター+BarrettⅡ

ArgosとBarrettTrueALを併用するとグループ内変動係数が低く、測定精度が高いといいたい様子。


☞ 新々計算式はAI準拠らしい。 ちょっと前まで、RayTracing準拠の計算式とかよく言ってたような気がする。
☞ 同フロアで日本眼科AI学会総会も開かれてました。

「AIの臨床応用とその課題」を視聴しました。短評。

日本眼科学会のオンデマンド配信によるものです。

    • SaMD(Software As a Medical Device)を開発済みで、近く正式承認されるということ。
    • 眼底写真や前眼部写真を選択して、候補病名をクリックすると診断の確度を%表示していれるソフトが例示されてました。

cf .Deep learning model for extensive smartphone-based diagnosis and triage of cataracts and multiple corneal diseases – PubMed

  • 手術に関しては、CCCの巧拙を評価するシステムがあり、ラーニングカーブの短縮化が期待できる。
  • SaMDはBeeline、Findex、NIDEK、Topcon4社が協賛していて、そのうち眼底カメラやスリットランプに搭載されるんとちゃうんかな。←後半は、勝手予想。

小生が希望するのは

  • 鑑別が難しい、ブドウ膜炎、視神経疾患(腫脹と萎縮両方)の診断ソフト。
  • 院内の患者さん情報をローカルLLMで管理して、特化した説明、紹介状を出力するもの。
  • ProprietaryではなくってopenなAPIなりLibraryなりを、MITライセンスレベルで公開してほしい。

AMOテクニスのPureSee眼内レンズについて

AMOは新命名がお好きなようで、今次は「PureSee=屈折型多焦点レンズ」と称する由。

過去の命名遍歴
・Symphony:EDoF型(=焦点深度拡張型)=エシェレット回折型(2焦点)

・Synergy:連続焦点型=エシェレット回折型(2焦点)+回折型(2焦点)

・Odyssey:改良型連続焦点型

・PureSee:屈折型多焦点レンズ

EDoFだけど回析格子がないので、ハログレが発生しないと謳う。
屈折型多焦点レンズとは「後面レンズ2.4mnm部分のみカーブを変えて、焦点深度を深める」ことにあり、加入度数はヒミツだけど+2.0D位らしい。


Optical and Visual Outcomes of a New Refractive Extended Depth of Focus Intraocular Lens より引用

Eyhanceの大幅改良バージョンというが、デフォーカス曲線みると単焦点レンズやアイハンスの遠方~中間距離をやや膨らかしただけような気もする。
Vivity+Panoptix  vs PureSee+Odyssey のMix&Match対決となるかな。

 


MRさんによると、

  1. PureSeeは、Symphonyの後継レンズとの位置づけ。VivityがActiveFocusの後継みたいな感じかな。
  2. Synergyは発売中止で、Odysseyに全面移行。

Pairing手法の最新情報

第129回日本眼科学会総会での「HOYA協賛 多焦点眼内レンズのペアリング」をオンライン視聴しました。
スクショ厳禁につき、テキスト文及び公開論文のみ記します。

実臨床例は和歌山医大の1例のみで、あとは文献紹介でした。

和歌山県立医科大学 岩西宏樹先生
  • 中間距離がやや遠い。「日本のキッチンは欧米より低い、などの日本の住環境を考慮されている」
  • 質疑応答:中間と遠方重視なら両眼Gemetricで、近方重視ならGemetetric+GemetrticPlus.両眼GemetricPlusは時期尚早であろう。
西眼科病院 西悠太郎先生
  • Gemetricはハローが少し出る傾向がある(軽度)。暗所での瞳孔径が大きい症例では慎重な適応検討が求められる。
  • NINO Study:Paringは両眼Gemetricと同等の遠方中間視力で、両眼GemetricPlusと同等の近方視力。∴Paringが遠方から近方までの眼鏡フリーを達成する最もバランスのとれたグループ。
  • 質疑応答:Paringのほうが、両眼GemetricPlus入れるよりも近方視力が良いのはなぜか?→MixAndMatchと同じような効果(加算効果ということかな?)が考えられるが、今後の検討にゆだねる。
慶應大学 四倉絵里沙先生
  • 両眼GemetricよりもParingのほうが薄暮所、明所での近方での視力が良い。↓

やはり、実症例1例では物足りんな~。

佐々木先生は「オールラウンドに使える」かもしれない、と前向き評価でした。
Vivity+PanoptixのMix&Match vs Gemetric Paringについての発表を楽しみにしております。

「近視抑制治療の最前線ー本格始動の前に知っておくべきポイント」を聴講しました

筑波大学医学医療系眼科 准教授 平岡孝浩先生の講演でした。@  第75回神戸臨床懇話会

外遊びの重要性
  • 大都市以外でも、緯度が高い北海度、青森、宮城に近視が多い。これは、日照時間が少なく、家にこもりがちなため。
  • 一日2時間以上外に出るとよい。屋外時間が長いと、近業が長くても近視になりにくい。つまり、キャンセル効果がある。
  • 台湾では国策でやっており、近視有病率を減らしてきた。日本では「外あそび推進の会」活動をしている。
特殊デザイン眼鏡

●デフォーカス原理によるもの:周辺網膜の遠視性フォーカス(フォーカスが網膜より後ろ)が良くない。そのため周辺部を近視性デフォーカスにする。

  • 大いに期待されたマイオビジョンだが効果がなかった。鼻眼鏡や眼球運動にともない効果が減弱する。☞小生過去ログでも経緯を詳述してます。
  • MyoCare(Zeiss):円柱型リング。1年で有効であるらしい。長期結果は未だ。☞Myokidsの後継、つまり4代目MCレンズ?Zeissに問い合わせ中。→「MyoCareレンズは日本国内では未承認の為、販売未定であり、提供できる資料はない」とのことでした。
  • DIMSレンズ=Defocus Incorporated Multiple Segments 400個埋め込まれている。近視性デフォーカスを形成する。☞これも掲載済み
  • Stellest(Essilor会社):高度な非球面性を有する小型レンズが、同心円状に埋め込まれており近視性デフォーカスを形成する(DIMSレンズに似たコンセプトである)。☞これは初めて聞いた!

●Contrast理論によるもの:網膜における強いコントラスト信号が眼軸長過伸展のトリガーとなっており、逆にコントラストを低減させる眼鏡を装用すれば近視進行を抑制できる。

  • DOT(SightGlass社)真ん中は単焦点、周りはdiffusion optics technology。☞これも既述
アトロピン点眼
  • ATOM2、ATOM-J、LAMPstudy、Orange Study:「濃度依存性に屈折度、眼軸長抑制効果がある」との結果。副作用とやめた後のリバウンドも同様に濃度依存性であった。0.025%(←参天のリジュセアの濃度)はリバウンドがきつい。十代後半まで長く使うことを推奨する。
オルソケラトロジー
  • 6歳~8歳から始めたほうが良い。抑制効果が高い。
  • リバウンドは?:14歳より若い年齢でリバウンドしやすい。15歳までは続けたほうが良い。
  • 結論:6-8歳で開始、18歳までは継続が理想的である。
  • アトロピンとオルソの併用。が結構強い効果がある。75%有効。
多焦点ソフトコンタクトレンズ
  • デフォーカス型:MiSightクーバービジョン
  • EDoF型:シード1dayPure
    デフォーカス型とEDoF型では、効果に差がなかった。
  • JJ&J ALBILITI:眼軸長抑制効果高い。;7D,10Dを加入している!のでもっとも効くらしい。☞これは初めて聞いた。J&Jに問い合わせ中。→「日本国内では承認されておらず、資料を全く持ち合わせていない」とのことでした。
光線療法
  • Red Light:Repeated Low-level Red-Right(RLRL):650nm,1600 lux、3分×2/day。7割きく。最強と謳われていたが、治療後後の網膜障害、中心窩での錐体の密度低下が観察される。中国では、製造中止となり推奨治療から外されてしまった。
  • Violet Oight:TLG-001J(バイオレットライト照射KB)で治験中
  • Blue Light KB:Mypoia X DopaVision
質疑応答
  • 従来の姿勢とか、外遊びの重要性についても伝える。そのうえで、患者さんの希望があれば上記治療について伝える。やりたくないものは続かない。
  • おすすめ:オルソ>多焦点ソフトレンズ。特殊構造KBが本格化すればなおよろしい。
  • オルソで間歇性外斜視の子供。寝ている間のずれが発生することがある。間歇性であっても、斜視があると難しい。手術をして眼位を正位にしてから治療開始する。アトロピンとか、多焦点ソフトレンズのほうがよいであろう。
  • ブルーライトカットメガネは?:かえって逆効果であろう。エビデンスがない。
  • 多焦点レンズも小1からできる。特に女の子はできる。

Panoptix vs Synergy・Odyssey vs Gemetric

Alconによると、、、

Odyssey・Synergyに対して

AはOdyssey、BはSynergyですね。
つまり、Panoptixのほうがハログレが少ないといいたいようである。

VivinexGemetricに対して

・Gemetricのように回折格子の幅を3.2mm程度に制限することはActiveFocus時代にさんざ実験済みで、単焦点ゾーンが広がるため遠方はよく見えることになるが、瞳孔径に依存した見え方を避けられえない。
・そのため回折格子幅を4.5mmにした。
・単焦点ゾーンが狭まることによる遠方視力低下は遠方パワー配分を44%と増加させることによって補っている。


以上は、Alconの一方的言い分なので、J&JとHOYAの言い分も機会があったら書きます。